【特集】「僕のための階級変更と思っています…永田克彦



 2月18日出発のフリースタイル・チームに続き、19日にグレコローマン全日本チームが約3週間のヨーロッパ遠征へ出発した。デモクリティア2002(ギリシャ)、ハンガリー・グランプリ(ハンガリー)、オリンド・ゲッリーニ記念国際大会(イタリア)と3大会に出場する。

 今回のヨーロッパ遠征は、今年1月からの新階級による大会へ初参加となる。初めての試みのため、減量の負担が減る選手であっても、どこか不安を匂わせる発言が多い中、新階級に対して「僕のための変更だと思っています」とポジティブに言い切ったのは、74kg級に出場する永田克彦(新日本プロレス職)だった。

 「対戦相手が重くなるし、手足も長くなるから難しい面もある。でも、今まではは筋トレなどの練習や食事をセーブしてきました。これ以上、体が大きくなってはいけないという不安と戦っていたんです。そのフラストレーションからの解放は、絶対にプラスに働くと思う。そしてなにより、思い切り鍛えた自分の強さを確認できるのがいいですね」

 シドニー五輪で銀メダルを獲得し、一躍脚光を浴びた。それまで世界選手権で上位の結果を残したことがなかったために、あの結果はフロックではないかと言外に匂わされ悔しい思いをしたこともあった。自分の実力に対する様々なプレッシャーの中で、必死に強さを確認していた。

 しかし、順調に調整を進め万全の準備の中で迎えたはずの昨年の世界選手権では、まさかの予選敗退。しかも、負けたサンチェス(スペイン)は、世界規模の国際大会がほぼ初めてという21歳だった。サンチェスが、永田を五輪銀メダリストだと気づかずに試合をしていたという事実も、永田を突き落とす材料になったにちがいない。

 「五輪でメダルを獲ったことは、確かに自分の力になりました。でも、去年の世界選手権で負けたことでゼロになってしまった。今年、新階級になったことでゼロから出発、という人が多いでしょうが、それよりも先に僕はゼロになっている。改めてゼロから、絶対にオリンピックに出て勝つんだと思うようになりました」

 前回の長野五輪に比べて不振が続くソルトレーク冬季五輪の中継も、ほとんど見ていた。「スピードスケートの清水宏保選手の活躍は、学年が同じということもあって刺激になりますね。本当にすごい人だと思います。改めて思いました。オリンピックで結果を出せるのが一番なんです。その前のどんな大会の成績よりも、やっぱりオリンピックの結果が一番なんですね」

 アテネ五輪まで、国際大会の成績が出るたびに、いろいろと雑音が耳にはいるかもしれない。雑音に揺らぎそうになる気持ちを、冬季五輪が引き締めてくれたらしい。「結果を出したいのは山々ですが、まず1勝です。手ごたえを探してきます」

 遠征での3大会は、永田の次へのステップとなるはずだ。



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