【特集】吉田沙保里が山本聖子に連勝…女子参考試合から




 山本聖子の世界V4への道がピンチ! 5月3日に女子の世界選手権とアジア大会の日本代表選考参考試合が新潟県十日町市の日大合宿所で行われ、55kg級で吉田沙保里(中京女大)が昨年まで3年連続世界チャンピオンの山本聖子(日大)を5−0で破った(右写真の上が山本)。4月8日の「ジャパンクイーンズカップ2002」に続いての勝利となり、日本代表へ大きく前進した。

 残る参考試合は6月15日と7月6日。吉田の殊勲なるか、それとも山本が巻き返すか−。(取材・宮崎俊哉)


 吉田沙保里の話 クイーンズカップで勝った自信を忘れないで戦い、精神力の弱さを出さないように戦おうと思っていました。自分のレスリングができました。自分は足が止まってしまうと全くダメなのですが、きょうは足がよく動いたと思います。実家(三重県)から父や兄が来てくれて応援してくれたのが力になりました。大学入学当時に比べたら、かなりパワーもついてきたので、世界選手権に向けてもっとがんばります。

 中京女子大・杉山三郎部長の話 沙保里は素晴らしかったですね。自分のところの選手ということを抜きにして、本当によかった。世界チャンピオンを国内で破るのは大変なことですが、それをやってのけましたからね。「いいね」の一言です。特にグラウンドでの身のこなし。グラウンドでは滅法強い聖子を相手に、そこできっちりポイントが取れたのは、間違いなく一流の証明でしょう。本物です。一方、聖子はキレがなかったですね。浜口京子もそうでしたが、世界選手権3連覇を達成した後の一つの壁かな。とりあえずは、これで吉田沙保里が山本聖子に対して「初手」を打ったということでしょう。日本の55kg級は凄いですよ。

 中京女子・栄和人監督の話 沙保里はクイーンズカップで勝ったことで自信がついてきましたね。動きがよかった。グラウンドでも聖子に返されなかったですからね。腕力もついきましたよ。ますます強くなっています。攻撃でも聖子から5 ポイント取りましたが、ぜんぜんタックルに行ってないでしょ。練習している技は出していません。それを全部出したら、もっと差が開いたんじゃないかな。次もやってくれますよ。安心して見ていられます。

 山本聖子の父・郁栄氏の話 聖子は昨年の全日本選手権あたりから動きが悪くなっていましたね。まあ、それでも全日本で勝てたのは、子供の頃からやってきた貯金でしょ。大学で男子選手とばかり練習しているので、男子のような動きになってしまった。アイツ本来の良さ、基本を忘れていますよ。この試合の1 週間ぐらい前から自分が直接指導していますが、これからスタンドで2つ、グラウンドで3つ、必ずポイントが取れる技をみっちりたたき込みます。聖子自身が「おかしい」と気づいて、オレの話を聞きたい、オレのところで教わりたいと思っているので、1 カ月もあれば十分。世界選手権で勝ったとき以上に強くなれますよ。 


福田富昭理事長熱血指導!

 ○…ナショナルチーム強化合宿では、全日本女子連盟の福田富昭理事長が初参加の選手にも目を光らせ、声をかけていく光景が頻繁に見られた。参考試合では、全試合細かくメモを取り、試合後は「京子!  聖子! 美里! 美香! 馨!」と名指しで注意。全員を集め、クリンチの組み方、タックルの入り方など10数点にわたり、手取り足取り指導した。

 世界の最新情報を知り尽くし、危機感を募らせた「女子レスリング産みの親」が自ら熱血指導に乗り出した。
(写真は坂本日登美=左=、山本聖子=右=の2人の世界チャンピオンと福田理事長)


山菜まつりで活力注入!

 ○…合宿所のある十日町市塩之又で5月2日、「山菜まつり」が開催され、参考試合の計量を終えた選手・役員30数名が参加した。初夏の好天のもと、真心のこもった山菜づくしの料理に下鼓(したづつみ)を打ち、緑鮮やかな蓬を入れた草餅つきに挑戦してリフレッシュ
(写真左)。合宿を支援する地元住民との交流で、アジア大会、世界選手権に向けての活力を注入された。

 なお、今回の合宿を含め女子強化の拠点でもある日大合宿所(桜花レスリング道場)が、日本オリンピック委員会レスリング競技強化センターとして認定された。



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