【特集】山本聖子が国内予選落ちのピンチ!…女子参考試合から




 世界チャンピオンの敵は十日町にあり! 6月11日から新潟県十日町の日大合宿所で行われている女子の第2次全日本強化合宿中の12日、世界選手権・アジア大会日本代表決定の参考試合が行われ、4年連続世界チャンピオンを目指す55kg級の山本聖子が、またしても吉田沙保里に完敗した。

 山本は、5月の全日本合宿後、姉・美憂がちびっこ選手を指導する大宮の道場に週3〜4回通い、父・郁栄氏の指導のもと姉をスパーリングパートナーとして猛特訓。試合前、郁栄氏は、「減量法から練習後のマッサージ、延長も含め最大9分間の戦略・戦術、大学3年間にやってきたことをすべて一新した。見違えるような聖子の動きに注目してほしい」と自信たっぷり。本人も試合前には笑顔を見せていた、

 しかし試合が始まり、序盤に3点のリードを奪われると、タックルを見抜かれて攻めあぐね、小刻みにポイントを重ねられる。1ポイントを返すのがやっとで、1−8と大差をつけられて黒星。打倒・吉田を果たせず、4月の「ジャパンクイーンズカップ」、5月の参考試合に続き3連敗を喫した。

 もう後がない山本。最後の参考試合(7月7日、同所)も負けて日本代表の座を逃すのか? それとも、ここ一番で瀬戸際の強さを発揮し代表のキップを奪い返すのか。どちらが代表となっても世界選手権金メダル最有力候補といわれる世界屈指の壮絶な代表争いの運命の最終対決は、あと3週間後だ。


 吉田沙保里の話 負けないことだけを考えて戦いました。足がよく動き、フェイントもよく決まったと思います。集中できたので、相手の動きがよく見えました。今回向こうも必死でタックルに入ってきましたが、それも完全に見切ることができました。勝ったときが一番うれしいので、それを考えるとどんなきつい練習にも絶えることができます。レスリングをやっていてよかったと、心からそう思います。今、とっても楽しいです。


 全日本・栄和人コーチ(中京女大監督)の話 前回に比べ聖子もよかったが、沙保里がそれをさらに圧倒的したということでしょう。自信もついてきて練習への打ちこみ方も変わってきました。自分から進んでウエートトレーニングもするようになりましたし、少しでも問題点があれば、スパーリングで徹底的に直します。もともと技術的には優れたものを持っていたので、パワーがついてますます持ち味が生きてくるようになりましたね。外国人選手が相手なら、今日の聖子以上に彼女の技は決まるでしょうから、世界に向けて大きく育てていきたいと思います。


 全日本・金浜良コーチ(ジャパンビバレッジ・コーチ)のコメント 目の前にいる世界チャンピオンを倒せば自分が世界ナンバーワンになれると、1年間死にもの狂いでやってきた沙保里が、今は聖子を上回っているということでしょう。チャンピオンでい続けることは難しい。まして魔物が潜むオリンピックでの戦いとなれば、聖子も自分自身をもう一度ゼロから鍛え直すぐらいの考えがないとならない。お互いが追い越そうという気持ちでがんばっていけば、さらに伸びるし、国内で最強の敵を倒してこそ、世界で勝てるわけです。

 考えてみれば、お互いありがたいことですよね。いいライバルがいて、競う気持ちがあってこそ、きつい練習に立ち向かっていけるわけですから。日本の55`級は、聖子と沙保里のどちらが世界に行っても絶対優勝できるというダントツの階級になりますよ。聖子は世界での実績もありますが、沙保里はジュニアでの経験だけ。聖子とは全くスタイルが違う沙保里が世界でどう通用するか、見てみたい気持ちもありますね。

 いずれによせ、2人には、目先のことだけを考えるのではなく、オリンピックを目標にどこまで強くなれるか、がんばってもらいたい。そのためには我々コーチ陣は。もっともっと考えて、どうすれば効果的に強くさせられるか、その方法を探っていかなければならない。選手が強制されてではなく、自分の意思でやれるようになれれば最高です。そうやってがんばってきたことは、たとえレスリングを引退してからでも、人間として生きてくるでしょうし。選手たちには、ぜひそうなってもらいたいと思います。

(文・構成 / 宮崎俊哉)



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