【特集】「両親に恩返しができました」…女子72kg級・浜口京子



 8日午前の部でヤナ・パノバ(キルギスタン) にフォール勝ちし、カン・ミンユン(韓国)に6−0で快勝。午後に1試合を残していたが、この時点で勝ち点の関係で優勝が決まった。そのことは知らなかった浜口は、優勝と聞かされ「本当ですか? うれしい。ほっとしています」と喜びを表した。さらに「きのうの午後は試合がなく、イライラがピークに達していました。疲れも出たんだと思います。夜は寝つかれませんでした」と、絶好調で臨めた前日から一転して体調を崩していたことを打ち明けた。

 この日も第1試合と第2試合との間隔が短く、集中力の維持などが楽ではなかった。しかし落ち着きはあった。勝負と思われた韓国戦を「柔道出身のようなので、投げ技を警戒していました。地元の声援を受けて最後はメチャクチャやってきましたが、それでも落ち着いて対処できました」と冷静さの勝利と強調。「マットに立ったら、やるしかありません。自分でもよくやった、戦い抜いたと思います」と胸を張った。

 3年連続で世界チャンピオンに輝きながら、一昨年、昨年と世界一を転落。「父には迷惑をかけ通しで、どん底を味わわせてしまった。母も私のことを心配してつきっきり。父と2人ですごす時間がなかった。両親には夫婦の幸せを感じてほしかった」と話したとき、不意に声が詰まった。世界一転落を誰よりも心配してくれたのが両親だった。「これで恩返しができました」と話す声は完全に涙声。00年の世界選手権で世界一を転落し、ブルガリアまで応援に来てくれた当時93歳の祖母はなさんに対して見せた以来の涙を、今度は喜びいっぱいのものにして多くの報道陣の前で流すことができた。

 だが、闘いは終わってはいない。11月2、3日の世界女子選手権で世界一奪還という大仕事が待っている。昨年負けたエディタ・ビトコウスカ(ポーランド)とニナ・イングリッシュ(ドイツ)、68kg級の新星から今年73kg級に上げてきたトッカラ・モントゴメリー(米国)など敵は多い。しかし親子ですごした苦しかった2年間の思いをぶつけ、この壁に挑む。その先にあるものは、もちろんアテネ五輪の金メダル。2年後の終着点で、この日以上の感激の涙を流すためにも、浜口の闘いは続く。




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