【特集】「自分から攻めまくる。それが作戦です」…吉田沙保里
アジア大会の日本女子レスリング第1号の金メダルを獲得してから2週間あまり。アジア・チャンピオンの吉田沙保里(55kg級、中京女子大)が10月25日、アジア大会優勝の喜びと、1週間後に迫った世界選手権への抱負を語った。(聞き手・宮崎俊哉)
Q:アジア大会の優勝おめでとうございます。試合直後のインタビューでは「まだ実感がわかない」と言っていましたが、今の気持ちは?
吉田:アジア大会では本当にいい経験をさせていただきました。でも、喜んでばかりもいられません。今は世界選手権に向けて、気持ちを切り替えています。
Q:帰国されたら、お祝い、お祝いで大変だったでしょう?
吉田:両親と兄、親戚、それに大学の先輩や仲間も釜山に応援に来てくれていたので、お祝いは金メダルを獲った夜にしてもらいました。でも、日本ではみんなが知っていて「金メダル見せて、触らせて」と言われました。本当に大きな大会だったんだな、とあらためて感じています。世界ジュニア選手権で優勝したときは新聞に小さく名前が出ただけでしたから。大学の近くのコンビ二のおばちゃんにも、おめでとう、と声をかけられて、フランクフルトを1本いただきました。
Q:アジア大会では4試合、ほぼ完ぺきな戦い方でしたが。
吉田:自分でも力を出し切れたと満足しています。あの雰囲気の中で戦って勝てたことは、大きな自信になりました。
Q:総当り戦になって、初戦で中国の選手と事実上の決勝戦となりましたが、試合前はどんなことを考えていましたか。
吉田:カオリン(伊調馨=アジア大会63kg級銀メダリスト)が決勝戦で負けたのを見て、私まで負けたら監督(栄和人中京女大監督=日本代表チーム・コーチ)の機嫌が悪くなって大変なので、絶対勝たなくてはと思いました。
Q:緊張は?
吉田:最初の中国戦の前は緊張しましたが、マットに上がったら落ち着きました。いつもそうなんですが、マットに上がったらもうやるしかないですから。
Q:その後はいつも通りといった感じで、試合後のインタビューでもドンドン笑顔になっていきましたね。
吉田:足がよく動いて、自分のレスリングができたので、負ける気はしませんでした。
Q:怖い監督さんからは金メダルを獲った後、何か言われましたか?
吉田:「オマエは凄いよ」と言ってくれました。
Q:機嫌がよくなってよかったですね。
吉田:ハイ。
Q:今もちびっこレスリングの指導をされているお父さんからは、何か言われましたか?
吉田:大会前は「とにかく思い切っていけ」とだけ言われましたが、終わったら「おめでとう。よくやった」と喜んでくれました。
Q:今回、女子選手は吉田さん、伊調さん、浜口京子(72`級、アニマル浜口ジム)さんの3人だけでしたがいかがでしたか?
吉田:いつも一緒にいて、とても楽しく、いい雰囲気で戦えました。
Q:大会中に誕生日を迎えられましたね。
吉田:チームのみんなだけでなく、選手村の宿舎で一緒だったほかの競技の選手からも「おめでとう」と言ってもらったり、メッセージをいただいて。とてもいい思い出です。
Q:練習はいつから再開されましたか?
吉田:帰国した翌日から練習しています。もともと減量はないので、体重も変わっていません。監督がワールドカップで留守のときも、日登美先輩(坂本=中京女大レスリング部キャプテン)の指導でしっかり練習していました。
Q:気合が入っていますね。
吉田:世界選手権は初めてなのでとても楽しみですが、それだけでなく、絶対金メダルが獲りたい
。代表争いをした聖子さん(山本=日大)は世界で3連覇もしているじゃないですか。それなのに、「何だ、吉田はアジアだけか」とは思われたくないので。
Q:世界選手権で戦ってみたい選手やライバルは?
吉田:誰が出てくるか知らないんです。
Q:ビデオで研究とかは?
吉田:全くしてないです。目の前に現れた敵を倒すだけ。それしか考えてません。
Q:自信がありそうですね。
吉田:というよりは、相手のことを見ていたら遅いんです、自分のレスリングは。相手に合わせず、ホイッスルが鳴ったら最初からガンガン攻めまくる。それができないと勝てないですから。
Q:作戦とか戦術とかなく?
吉田:自分から攻めまくる、それが作戦でしょうか。だから、残り時間によって戦い方を変えることもありません。
Q:最後に、このホームページの読者の方にメッセージを。
吉田:アジア大会では応援ありがとうございました。おかげさまで、金メダルを獲得することができました。世界選手権でも絶対金メダルを獲って、世界一だと認められ、オリンピックに近づけるようがんばりますので、応援よろしくお願いたします。
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