【特集】父娘で取り戻した世界一、A浜口さんが号泣!



 浜口京子(浜口ジム)が世界一奪還! アニマル浜口さんが泣いた! 親子の夢が現実に近づいた! 11月2−3日、ギリシア・ハルキダで行われた世界女子選手権72`級で、浜口が3年ぶりに世界チャンピオンの座を奪還。アニマル浜口さんは顔中くしゃくしゃにしてまな娘を抱きしめた。2人の目には04年アテネ五輪の金メダルがしっかりと映っている。


 日本選手団と浅草応援団によるカウントダウンが始まった。スコアは5−1。誰もがタイムアップを待ち切れない一瞬。それは、マット中央の浜口も同じだっただろう。

 電光掲示板の時計が「0」となった。日本選手団のエネルギーがすべて浜口の体に集中した。それを受けた浜口の体が力強く躍動し、3年ぶりの世界一の感動が体じゅうからあふれ出た。

 苦しい3年間だった。99年まで3年連続で世界一になった選手が、その後2年間、勝つことができなくなった。昨年は表彰台にも見離された。「浜口はもう限界」。そんな声が容しゃなく親子を襲った。だが、自分の力を信じ世界一を見つめてきた。世界一奪還の予兆は、7月に世界の強豪を集めて東京で行われた世界合宿であった。

 浜口は世界チャンピオンのエディタ・ビトコウスカ(ポーランド)をはじめ、どの選手にも圧勝した。そのエディタには準決勝で4−0と快勝。決勝の相手の王旭(中国)は若手なので勝って当然だった。

 「スパーリングのように行け、というコーチからのアドバイス通りにできました。緊張はしませんでした」。涙も出なかったのは、勝って当然の試合の連続だったからなのだろうか。

 一方、父のアニマル浜口さんは目を真っ赤にはらし、「親子が…、親子が…」と繰り返し、なかなか言葉が続かない。「もう終わりという声を嫌というほど聞きましたよ。でも、親が子を信じないでどうするんですか。いつも一緒でしたよ」。

 その脳裏には、苦しかった3年間のことが浮かんでいるのだろう。何度も絶句し、世界一奪還を喜んだ。娘の優勝を5年前の初優勝の時に娘を肩車にかかえて優勝を祝ったシーンは、父と娘のきずなを世間に訴えた。今回は応援団として会場に来たので、肩車のパフォーマンスはできなかったが、"子を信じる"ことを実践。父の娘への深い信頼と愛情が、心ない中傷を退けた。

 女子レスリングのアテネ五輪採用が決まったのは昨年9月のこと。五輪の表彰台を意識して聞いた君が代はこの日が初めてになる。深い愛情で結ばれた親子は、五輪での金メダルを目指して一直線に突き進むことだろう。



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