全日本選手権コメント集(グレコローマン)


【55kg級】豊田雅俊(自衛隊)

決  勝 ○[3-1=6:02]安原隆(自衛隊)
 【評】豊田がパッシブを取りパーテールで攻めるが、もつれてしまい、安原がローリングで1点。第2ピリオドも豊田がパッシブを取り、今度はローリングを決めて2点。延長へもつれ、クリンチから豊田がそり投げを決め、貴重な1点を挙げた。豊田は初優勝。(写真:青が豊田)


 「高校2年生のときから天皇杯には出場しているのですが、10年目で初めて優勝することができました。勝った瞬間は、本当に気持ちがよかったです。去年54kg級で優勝している村田選手(知也=日野高教)が出場していないので、彼に勝てずに優勝したのは心残りですが、これも運命ですから。

 最近のグレコローマンは、スタンドで押し込んでパッシブをとって、それから点数が動く展開です。でも自分の場合は、スタンドで技をかけているのにパッシブと判断されることが多くて、そのスタイルを変えようとしてきました。いくら得意でも、勝つためには不利なことですから。それが、少しずつ形になってきていると思います。

 春先の海外遠征のメンバーに加えてもらえると思うので、久々に自分のレベルをよく確かめてきます。そして、6月の全日本選抜には、今年の日本代表だった村田選手も出場してくるでしょうから、そこできちんと勝って、世界選手権に出るつもりです。オリンピックまで、この勢いで進みます」


【60kg級】笹本睦(綜合警備保障)

決  勝 ○[5-0=6:05]富谷光雄(自衛隊)
  【評】笹本がパッシブからローリングで2点を先制。しかし、このあと富谷の攻撃に攻めあぐね、第2ピリオドを終わって2−0で、延長へ。しかし延長のクリンチでは、見事なそり投げを決め、振り切った。笹本は3年連続3度目の優勝。(写真:赤が笹本)

 「決勝戦は延長までもつれましたが、富谷選手は弱くないし、何度も試合をしていて手の内を知られているので、こんな展開になると思います。でも、今年は不本意な一年でした。冬の遠征では3大会連続で表彰台にのぼったし、2度優勝して調子がよかったのですが、いくら国際大会で勝っても、世界選手権で勝てなければ何もなりません。今年の世界選手権で2位になった選手は、以前対戦したとき試合内容で勝っていた選手なので、なお悔しかったです。

 来年の世界選手権では、当然、メダルをねらってゆきます。オリンピック出場の権利は10位以内ですが、きっと、メダルを取らなければ満足できない。そのためには、ここ一番で正確に技をかけられるようになりたいです。そのために、今まで以上に試合経験を積んでゆこうと考えています」


【66kg級】飯室雅規(自衛隊)

決  勝 ○[4−0]大井将憲(自衛隊)
 【評】飯室がパッシブを取り、場外をはさんでの2度のローリングなどで4−0とリード。第2ピリオドは両者ともポイントがなく、そのままのスコアで飯室が勝った。飯室は3年連続3度目の優勝。(写真:赤が飯室)


 「大井(将憲)とは拓大からずっと一緒で、今回が2回目の対戦。前回負けているので、今回は絶対勝ちたいと思い、しっかり作戦を練ってきました。相手が焦っているのが分かったので、そこうまく攻めて、最後まで自分の流れでした。自分の課題は上半身のパワーアップ。冬の間にしっかり鍛えて、海外でも勝てるような選手になります」


【74kg級】永田克彦(新日本プロレス職)

決  勝 ○[5-1=6:18]菅太一(警視庁)
 【評】永田がパッシブを取ってパーテールがローリング。しかし体勢が崩れて上下が入れ替わり、菅がローリングで1点を先制。永田は第2ピリオド中盤にパッシブでのパーテールポジションからローリングを決め、2−1と逆転。延長へもつれ、クリンチから首投げをきれいに決めて決勝点を挙げた。永田は6年連続6度目の優勝。(写真:赤が永田)


 「決勝戦は最初受けてしまいました。先に点を取りにいかないとダメなのに…。お互いパターンがバレバレなので、その点はやりにくかったですけど、スタミナには全く不安はないので必ず追いつけると思っていました。今回、体調は万全です。74kgという階級にも、体が慣れて安定してきました。世界に向けて、もっともっと体力アップを続けていきます。身長のある選手や手足の長い選手とやると、上から封じ込まれてしまうんですが、それにどう対処するか。タイプの異なるいろいろな選手に対する身のこなし方をしっかりさせることが今後の課題です」


【84kg級】松本慎吾(一宮運輸)

決  勝 ○[Tフォール、2:27=11-0]木下英規(練馬駐屯地ク)
 【評】松本がパッシブを取り、パーテールからローリングで2点。その後、俵返しなどグラウンドでたたみかけるような攻めを見せ、11点を取って実力を示した。松本は4年連続4度目の優勝。(写真:赤が松本)


 「優勝は最高にうれしいです。2週間前、練習中に左手を骨折し、大会に出るべきかどうか悩みました。でも、国内で負けるわけにもいきませんし、どんな状況でも勝たなければと考えて出場に踏み切りました。この経験は、きっとプラスになると思います。

 ケガをしていたので、予選では左手を使わないように、持ち上げる技は使わずに試合をしていました。でも、決勝では自分の強さや俵返しを見せなければ、と思ってけがをかえりみずに技をかけました。天皇杯をもらったのに、王者らしいところを見せない試合ぶりでは格好が付きませんでしたから、狙い通りです。日本では、自分と力が合う練習相手がいません。海外での経験を積んで、来年の世界選手権では必ずメダルを取り、オリンピックでは金メダルを取ります」


【96kg級】加藤賢三(大東大)

決  勝 ○[4−1]谷口周平(自衛隊)
 【評】加藤が開始早々に飛行機投げで3点を先制。これで余裕をもって戦い、第2ピリオドに1点を加える。最後は1点を失ったものの、4−1で判定勝ち。加藤は初優勝。(写真:赤が加藤)


 「自分としては、今までと変わったとはそんなに思わないのですが、結果が出ているので、きっと何かよくなっているのだろうと思います。来年の3月には大学を卒業です。就職してからは、もっと技術を学んでゆきたいと考えています。

 世界選手権やオリンピックのことは、まだ具体的に考えたことがありません。全日本で優勝しましたが、実は、まだ森角さん(裕介=新日本プロレス職、今年の日本代表)には勝ったことがないのです。森角さんにも勝って、日本できちんと勝ってから、世界選手権やオリンピックのことは考えようと思っています」


【120kg級】鈴木克彰(警視庁)

決  勝 ○[3−2]瀬川浩寿(警視庁)
 【評】瀬川が第1ピリオドの中盤にパッシブを取り、パーテールポジションからがぶり返しで2点。第2ピリオドは鈴木がパッシブを取りローリングで2点を返す。ラスト20秒、、相手を崩してバックを取って1点を勝ち越して逃げ切った。鈴木は3年連続3度目の優勝。(写真:赤が鈴木)


 「ちょうど、1年ぶりの試合です。1年前の全日本選手権から2週間後にケガをして、それがもとでじん帯の手術をしました。ベッドから起きあがれなかったんです。そのときは、不安でなりませんでした。オリンピックへ向けて、12月がまず日本代表になる第一歩だと考えていましたが、それに間に合うのか自信がなかったんです。

 6月末からリハビリと、(130kg級が120kg級に変わったので)ふだんの体重を今までより10kgくらい落とすのを始めたのですが、JISS(国立科学スポーツセンター)のスタッフに栄養を管理してもらって、リハビリも管理してもらって体も軽くなり、ここまで動けるようになりました。最初の2ヶ月くらいは、辛くてたまりませんでした。でも、手術をしてくれたお医者さん、体重のために食事を見てくれた管理栄養士さん、リハビリの先生など、いろんな人がよいタイミングで支えてくれて、ここまでやってこれました。本当に感謝しています。

 来年の世界選手権に出場し、オリンピック出場の権利を手に入れて、さ来年が選手としてピークになるように、これから練習していきます」




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