アテネ五輪までのビクトリー・ロードがスタート…山本聖子


 女子レスリングの五輪採用が決まってから初の世界選手権で、51kg級の山本聖子が金メダルを獲得。日本女子のアテネへ向けてのビクトリー・ロードがスタートした。

 苦しい戦いだった。2回戦で中国選手に延長に持ち込まれ、決勝も先行されて追いかける展開。世界のレベルは急速に上がっており、2年連続世界一の山本といえども気の抜けない試合の連続だった。

 決勝の相手のボロソバとは、11月初めのワールドカップ(フランス)でも戦い、0−1とリードされたまま延長にもつれ、やっと勝った相手。「パワーにつきあってしまった」という反省をもとに戦った。それでも楽勝できない。「うれしい」という反面、本人のみならず日本選手団のだれもが他国のレベルアップを実感させられた試合だった。

 山本は昨年のV2のあと、ことしに入って国内で2敗を喫している。4月の「ジャパンクイーンズカップ」で高校生の伊調馨(愛知・中京女大付高)にフォール負け、10月の国体におけるワンマッチで吉田沙保里(中京女大)にテクニカルフォール負け。いずれも年下の選手が相手であり、そのあたりが不安視された。しかし「ここぞという時には絶対に負けません」ときっぱり。その2敗が、どんな時でも油断をしてはならないと気を引き締めさせてくれ、いい方向で影響してくらたという。

 日の丸が揚がり、君が代が鳴り響いた館内。これまでの女子の世界選手権では、その大会だけのものだった感動が、今回からは五輪を意識することになる。山本が「この感動をアテネで味わえるかもしれないと思った」と言えば、日本レスリング協会の福田富昭専務理事は「他国がどんなに強化してきても、アテネでは絶対に金メダルを取る、この感動を味わう」と、決意を新たにしたという。

 五輪ではこれまでの6階級から4階級に減ることが決まっており、パワーに劣る日本選手には不利な状況となる。だが、この日の感動を、選手とコーチの一人ひとりがしっかりと心にとどめて練習に励めば、日の丸を揚げることは不可能ではないだろう。



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