世界チャンピオン破った16歳、伊調馨(中京女大)

 昨年、団体世界一を奪還した女子レスリングに、またも若き新星が誕生した。4月8日、茨城・霞ケ浦体育文化会館で行われた「ジャパンクイーンズカップ」の56kg級で、16歳の伊調馨(愛知・中京女大付高)が、準決勝で昨年世界一の山本聖子(日大)を、決勝で99年世界2位の清水真理子(群馬県協会)を連続フォールに下して優勝。だれもが予想していなかった世代交代を実現させた。

 「山本さんと戦うのは、正直言って怖かった」と言う伊調。山本は51kg級と合わせて2年連続の世界チャンピオン。その貫禄の前に弱気になりかけたが、自らのパワーが山本に劣らないことが分かると弱気はなくなった。

 0−1とリードされたものの、第2ピリオド中盤に組み合ったあとテークダウンを奪い、うまく体を乗せてフォールへ追い込んだ(写真右上)。この勝利で決勝の清水戦はリラックスしてできたという。3−1とリードした段階でいっそう余裕ができ、清水の逆転を狙った捨て身の攻撃を冷静にかわすと、最後はきっちりとフォールへ持ち込んだ(写真左下)

 51kg級世界チャンピオンの山本が99年12月に1階級アップして以来、この階級の注目は山本と清水の争いに絞られた。00年世界チャンピオンと99世界2位の争いの前に、世界ジュニア(18〜20歳)チャンピオンの吉田沙保里(現中京女大)ですら大きな実力差が感じられた。

 16歳の伊調はそんな状況にひるむことなく2人を連破した。この大会はシニアの下にカデット(16〜17歳)があり、普通ならこちらの方に出場させるところだ。だが指導する中京女大の栄和人監督は伊調の実力を考え、あえてシニアに出場させた。「山本にも負けないパワーを持っている。世界一を目指させるため、1年でも早く世界一のレベルを体験させてやりたかった」と言う。

 その期待に見事にこたえた優勝。世界選手権の代表はこのあとの全日本合宿での参考試合などを経て決まるが「世界チャンピオンが見えてきました。狙います」ときっぱり言い切った。

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