「サブミッション世界大会」出場を発表

 日本レスリング協会は21日、東京・信濃町の明治記念館で記者会見し、世界サブミッションレスリング選手権(4月11−13日、アラブ首長国連邦=UAE)への選手派遣を発表。総合格闘技進出を明らかにし、日本オリンピック委員会(JOC)の支援をとりつける計画を示唆。オリンピック競技団体の強みを発揮して乱立状態の総合格闘技の統一を目指すことになった。

 砂漠の国UAEで行われる関節技・絞め技ありのレスリングの大会「世界サブミッションレスリング選手権」。優勝賞金1万ドル(約120万円、無差別級は4万ドル=約480万円)など総額20万ドル(約2400万円)の大会へ派遣されるのは、昨年12月に2年連続でフリースタイル76kg級の全日本王者に輝いた小幡邦彦(山梨学院大)、99年のグレコローマン63kg級全日本王者の平井満生(綜合警備保障)のほか、グレコ69kg級の池田秀治、フリー85kg級の藤田尚志、両スタイル130kg級の福田大樹(いずれも山梨学院大)の5選手。ほかに、モントリオール五輪代表で、プロアマの仲介役をかって出た谷津嘉章さん(日大卒、現プロレスラー)も出場する。

 会見もは福田富昭専務理事、高田裕司・前強化委員長(山梨学院大コーチ)、富山英明強化委員長(日大監督)が出席。いずれも「総合格闘技の振興はレスリングの普及と強化につながる」と話し、レスリング協会の総合格闘技進出の理由を話した。


 推進役である協会の高田裕司・前強化委員長は「協会内で予選をやりたかったが、今回は時間がなかった。全日本王者、学生王者級の選手ばかりで、協会代表といってもさいつかえない」と話す。

 一方で、来年以降はしっかりした予選を実施し代表を決めたい気持ちを話す。さらに、今回の遠征で主催するシェイクタハヌーン王子と交渉し、日本代表選出の権利をもらってくる計画も明かした。

 同大会にはこの日発表された5選手だけでなく、高阪剛、田村潔司(ともにリングス)、矢野倍達(RJW)、宇野薫(和術慧舟会)、植松智也(K'zファクトリー=修斗)ら総合格闘技のプロ・アマ選手が出場するが、予選が実施されたわけではなく、主に仲介者の推薦によって決定された。

 かつてトライアスロンがそうだったように、現在の日本には総合格闘技の団体や大会が多く存在し、利権などがかかわって統一組織や統一ルールがないのが現状。そのためまとまりのない状態になっており、予選すらできないのが現状だ。

 だが、財団法人である日本レスリング協会と、同協会を通じてその上部団体のJOCがかかわれば話は変わってくる。高田・前強化委員長は柔道、相撲、レスリングからなるJOCの格闘技プロジェクトの強化担当理事であり、総合格闘技への進出を同プロジェクトの活動として考えていく。

 総合格闘技の団体にとって、他団体の主催大会にはおいそれと出場できないが、JOCのような公的機関の主催・後援となれば問題はなくなる。

 遠征に参加する高田氏は、JOC役員の肩書をフルに使い、場合によっては「五輪金メダリストとして観客に紹介してもらう」(福田富昭専務理事)などして、大会のステータスアップにも協力。日本代表選出の“お墨付き”を取り付けてくる予定だ。オリンピックにつながる組織の申し出なら受け入れられる可能性は高いだろう。

 プロとアマの仲介役の谷津嘉章(SPWF=モントリオール五輪代表)は「各団体で独自のルールがあっていいが、レスリング協会として決まったルールを決め、確固たる組織を作って大会を実施していきたい」と総合格闘技界の統一構想を話す。

 15年前に格闘技で初めてプロアマ・オープン化に挑戦した日本レスリング協会は、格闘技界に再び歴史的な1ページを書き加えることになった。


 ○…プロアマの仲介だけでなく、99kg以上級に出場して大会のレベルを実地体験する谷津嘉章さんは、総合格闘技の発展のため、プロレスとの明確な色分けを実行していく意向を示した。

 プロレスのエンターテインメント性と総合格闘技のリアル性が融合しては双方にマイナスという持論の谷津は、プロレスラーが出場するにしても自らのように格闘技の基礎を要求していく方針。疑惑の残る試合やパフォーマンスをした選手は徹底的に排除し、リアル格闘技の道を追求していく方向性を示唆した。


 世界サブミッションレスリング選手権 通称「アブダビコンバット」大会。アラブ首長国連邦のシェイク・タハヌーン殿下が米国留学中に柔術にはまり、帰国して98年にスタート。豊富な資金で、グレイシー一族やマーク・ケァー(米国)など世界中から強豪格闘家を集める大会。これまで日本からは修斗選手らが参加した。打撃は禁止で日本のコンバットレスリングに似ており、5階級と無差別級で実施。
 

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