前・現全日本王者らが「サブミッション世界大会」に出場

 日本レスリング協会の総合格闘技進出がスタートする。合わせて日本オリンピック委員会(JOC)からこうした活動に予算をもらえることになり、相撲や柔道の強豪の総合格闘技参戦も道がつながった。

 日本協会は、グレイシー柔術の出現でブームとなった総合格闘技に早くから関心を示していたが、4月11−13日にアラブ首長国連邦で行われる関節技・絞め技のある格闘技大会「世界サブミッションレスリング選手権」に現・前全日本王者2人を含む5選手を派遣することになった。

 これまでにも現役レスリング選手がパンクラスやコンバットレスリング(関節技・絞め技ありのレスリング)の大会に出場したことはあったが、協会としてはタッチしていなかった。しかし「総合格闘技の振興はレスリングの普及につながる」と参戦意思を示しおり、国際レスリング連盟に対しても前田日明VSアレクサンダー・カレリンのVTRを提出し、世界的に総合格闘技とのリンクを働きかけていた。

 今回、主催者から推薦を受けたことで選手派遣を決定。21日に福田富昭・専務理事と高田裕司・前強化委員長(山梨学院大コーチ)、協会とプロ格闘技の橋渡し役として名乗りを挙げた谷津嘉章氏(SPWF=モントリオール五輪代表)による記者会見が行われ、24日には出場選手の練習が披露される。

 派遣されるのはフリースタイル76kg級全日本王者の小幡邦彦(山梨学院大)、99年グレコローマン63kg級全日本王者の平井満生(綜合警備保障)ら5選手。急な話だったことで関節技や絞め技の練習はやっておらず、高田・前委員長は「勝てないでしょう」と結果は求めていない。

 しかし「レスリング界の総合格闘技参戦のスタートとしたい。しっかり練習させて、来年は予選を勝ち抜いて出場させたい」と話し、“まずスタート”の精神で参戦する。新しいことを始める時には、議論が繰り返され、いっこうにスタートしないことが多い。この決断は高く評価されよう。

 高田・前強化委員長はシドニー五輪レスリングの監督を務めたあと、レスリング、柔道、相撲で構成されるJOCの格闘技プロジェクトの強化担当委員長に就任した。同氏の働きかけで、こうした活動に対して予算が認められることになったという。今後は選手をしっかり育て、「PRIDE」など打撃もある総合格闘技大会にも選手を派遣させたい意向。幸いモントリオール五輪のチームメートの谷津氏がプロとのパイプを持っており、道はつながっている。

 柔道や相撲からも総合格闘技への道がつながったことになる。井上康生(東海大)らのシドニー五輪金メダリストですら、柔道連盟の活動として総合格闘技へ参戦できるわけで、基礎体力と技術がしっかりして世界で通用する柔道強豪の参戦は、総合格闘技の地位と競技レベルの飛躍的に伸ばしてくれ、競技人口の減少に悩む各格闘技界の起爆剤となるのは間違いない。日本の格闘技界に、新しい時代が幕を開ける


 世界サブミッションレスリング選手権 通称「アブダビコンバット」大会。アラブ首長国連邦のシェイク・タハヌーン殿下が米国留学中に柔術にはまり、帰国して98年にスタート。豊富な資金で、グレイシー一族やマーク・ケァー(米国)など世界中から強豪格闘家を集める大会。これまで日本からは修斗選手らが参加した。打撃は禁止で日本のコンバットレスリングに似ており、5階級と無差別級で実施。
 

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